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美しい少女一人を好きになり(佐佐木幸綱)/人を好きになった日のシャーベット

恋という疲労

美しい少女一人を好きになり夏の一日(ひとひ)の疲労鮮(あたら)し 
佐佐木幸綱『相聞歌篇』(『佐佐木幸綱歌集』短歌研究社より)

人を好きになると、感情が大忙しだ。
気づいたら見つめている。目が合うと慌ててそらす。
「恋人はいるのかな」知りたいけど、知ってショックを受けたくない。
会えるかもしれないとドキドキしながら急ぎ足、会えなくてがっかり・・・

恋心が芽生えたとき、人はとてもダサくなる。空回りしてぐったりする。

そんな「疲労」をとてつもなく美しく詠んでいているのが、佐佐木幸綱(ささき・ゆきつな)さんの歌。胸がぐっと詰まる、でも鮮烈なイメージが残るのは「鮮(あたら)し」の一言が効いているから。身に覚えのある感情の少し先に「美しい少女」の影がちらつく。

そうだ、恋をすれば疲労する。でも疲労であって疲弊ではない。むしろ、恋特有の、心の細胞をすべて真新しくしてしまうような鮮やかな現象であり、生きる希望の光でもあるのかもしれない。

「疲労」という言葉を詩語に昇華させた、美事でみずみずしい歌だ。

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人を好きになった日のシャーベット

人を好きになった夏の日。眩しい日差し。寄せてはかえす波のような想い。
浮足立った細胞を沈静化するためには、ヨーグルトのシャーベットがいちばんだ。すーっと喉に通り、トロッと溶けて、身もこころも洗われる清々しさ。

このシャーベットは「どうやって作るの?」と聞かれるレシピ。(母に教わりました)でも、「自慢のレシピ」と言うには恥ずかしいくらい超簡単で、失敗なくどなたでもおいしく作れます。

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作りかた
材料はヨーグルト(400cc)・牛乳(150cc)・砂糖(120g)の3つ。
砂糖はさっぱりした甘さを出すため、グラニュー糖がおすすめ。
ヨーグルトの表面にたまっている水分(乳清/ホエイ)ごと使います。
※水分が少ないヨーグルトを使う場合は、牛乳を50ccほど増やしたほうがよいかも。

これらをボウルでかきまぜて、まざったらタッパーに入れて冷凍庫で冷やし固めるだけ。大きめのスプーンで固まったところをすくって盛れば、溶け出したところがトロッとしておいしい。(途中でかき混ぜたりしなくてOK)
最初はカチコチになっているので、すこし室温にだしてあげるとよいです。

パイナップルやグレープフルーツをまぜるなどのアレンジも◎

ほてった心と身体は、これでスーッと落ち着くはず。
恋は疲れる。それでもやめられない。

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作者についての私的解説
佐佐木幸綱(ささき・ゆきつな)1938年東京生まれ。
 男性の目線から見た恋ってこんな感じなのかな、とドキドキする歌多数。「歌いながら歩めるお前、立ちどまり振り向く顔を待たれているよ」(「相聞歌篇」)など。「世界を遠くとおざけて胸乳隆(たか)き夜を谺(こだま)のごとくひびき合うなり」など、肉体感覚を詠んだ作風は「男歌」と称される。若き日はラグビーもやっており、従来の「歌人」のイメージをくつがえす姿に当時の歌壇はざわめいていたらしい。(晩年の氏はゴッドファーザー感がある)
 ちなみに、佐佐木家は弘綱・信綱・治綱と続く国文学者で歌人の家。新しい感覚の語を詠み込んだ歌や口語調の歌を若い頃にたくさん作っている一方で、心地よく突き刺さるリズムや古語をごく自然に詠む様子は「我が家での会話は五七五七七でやるんだ」という述懐もあるように、さすがは歌人の家の生まれ、と言うべきか。服を着こなすように和歌のコードを自在に操っている感じがする。幼少期から歌を作らされ本人は嫌だったみたいだが、20歳で父が他界して本格的に作歌をはじめた。30歳頃の歌に「まざまざと佐佐木信綱の血を継げば凄惨にさらに研ぎゆく視線」(『群黎』)。

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