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秋の手帖

ついきのうまで
入道雲が ドーダドーダと胸をはっていた。
それがなんと きょうは
いわし雲が 高い空いちめんに泳いでいる。

ついきのうまで
太陽は パンツいっちょで のっしのっし、
それがなんと きょうは
太陽ったら ヨソイキのシャツで ふふふ。

(中略)

夏と秋よ おまえたち
「きのう」と「きょう」のあいだで
どんな話し合いをしたんだい?

季節の神さまから新しい手帖をもらって
すこしドキドキする。
――これからの日々に
  何を書き込むのかわたしは。

作者

工藤直子(くどう・なおこ)

1935年〜 台湾生まれ。『のはらうた』や『てつがくのライオン』など。小学生の時に読んでやたら心に残ったかまきりの詩は工藤さんによるものだった。(「おうなつだぜ おれはげんきだぜ」・・・って詩です)新編『あいたくて』のあとがきに、「『地球、あなたのところに生まれてよかったよ』と言い続けたい」とある。地球を、生きものを、季節のめぐりを、ほれぼれと見つめるひと。

詩のソムリエより

ある朝、目がさめて外に出たら、すーっと涼しい風。 空をあおぐと、いつもより透明感がまして空高く見えました。 昨日はまぶしい青にもくもく入道雲だったのに、急に大人っぽい…。夏と秋のいれかわりは、さらっとやってくる。秋の手帖に、何を書き込もうかな。とりあえず、食べたいものリストでも…。

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